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装飾電球の発光スペクトル測定
光ファイバー入力のCCD分光器を使用すれば,蛍光鉱石,生物発光,LED光源,蛍光灯,ハロゲン光源などの発光スペクトルを簡単に測定することができます. ここでは,インターネットで販売されていた装飾電球を例に,異なる発色の発光スペクトルを測定し発光の起源を探っていきます.
「チャームライト ユリ(紫)」の発光スペクトル測定
以前,インターネットで購入した装飾電球「チャームライト ユリ(紫)」の発光スペクトルを測定してみました. チャームライトは旭光電機工業製の装飾電球ですが,現在は生産終了しています.
チャームライトを汎用のソケットE26の取り付けて通電すると,図1のように花の部分は紫色に,葉の部分は緑色に発光します. 発光強度は,意外に弱く,部屋を暗くしないときれいに見えません. 部屋を暗くして光らせた場合,目視では図2のように見えます.
下に示す動画(0.1倍速)で見ると紫の花が点滅しています. 動画では点滅周期が一見30Hzに見えますが,動画撮影のフレームレートが交流電源60Hzに対してアンダーサンプリングだから周期が遅く見えているものと考えられます. 一方,緑の葉は点滅していません.これは発光の原理が異なることを示唆しています.
図3に光ファイバー入力のCCD分光器を使用した発光分光の装置構成例を示します. 装置構成は単純です. 光ファイバー先端に光ファイバーコリメーターBBFC-02SMA(2023年5月,後継機種:BBFC-03SMAに移行)を取り付けて発光測定位置を選べるようにして,直径数mm程度の領域の発光スペクトルを測定しています.
図4に,チャームライト ユリ(紫)の発光スペクトル測定結果を示します. ピンク色の線が花(紫)の発光スペクトル,緑色の線が葉(緑)の発光スペクトルです.
太陽や白熱電球のように,ある波長範囲で連続分布したスペクトルを連続スペクトルと呼ぶのに対して,プラズマ発光のように,とびとびの波長に不連続な輝線を含むスペクトルを線スペクトルといいます. 花からの発光は,不活性ガスのグロー放電により生成された線スペクトルと考えられます. 一方,葉からの発光には花同様の線スペクトルの上に波長領域:500〜600nm(緑色)に蛍光と思われる発光が観測されています. 60Hzの交流電場に追従できていないことから,蛍光寿命は長いと予想されます.
図5は,非通電時に撮影したチャームライト ユリ(紫)です. 花部の電極と葉部電極では色が異なります. 葉部には,緑色の蛍光を発する蛍光材が塗布されていると考えられます.
図6に花部の発光スペクトルと不活性ガスの線スペクトル波長を示します.
理科年表には,各種不活性ガスのスペクトル線の波長が記載されています. 花部の測定発光線スペクトルの波長と合う不活性ガスの輝線を探したところ,線スペクトルの大部分はキセノンとアルゴンの発光波長とよく一致しました. キセノンとアルゴンの発光波長と一致しない線スペクトルの何本かは,ヘリウムの線スペクトル波長と一致します. この結果から,ガラス電球内には少なくともキセノン,アルゴン,ヘリウムが封入されていると考えられます.
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