膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

ボヘミアガラスの分光測定

CCD分光器を中心に構築した分光システムを使えば,さまざまな材料を多角的に分光測定分析することができます.ここでは,代表的なアンティークガラスであるボヘミアガラス製のボタンを例に,蛍光スペクトルなどの分光測定例を示します.

ウランガラスの蛍光スペクトル測定

ボヘミアガラスは,チェコの伝統ガラス工芸品です. ウランガラスは,ボヘミアガラスに使われるガラス材の一つです. ウランガラスは,ガラスを黄色や緑色に着色するために,ごく微量(0.1%程度)のウランが添加されたガラスで,紫外光照射によって黄緑色の蛍光を発します. その発祥は1830年頃のヨーロッパで,食器や装飾品などのウランガラス製品が盛んに作られてきました. しかし,1940年代,ウランが原子力に利用され始めたのを境に,生産は激減し,現在入手できるウランガラス製品のほとんどは骨董品なのが実状です.
図1は,ボヘミアガラスで有名なチェコの町,ヤブロネッツで作られたウランガラス製のボタンです.

ボヘミア1図1 ウランガラス製のボタン(チェコ,ヤブロネッツ)

【ボヘミアガラス製品の入手先】  >> チェドックザッカストア (外部サイト)

ボタンは昔ながらの製法で作られています. まず,ガラス棒を炉で溶かし金属の型で挟んで形を作ります. 縁を研磨し,ハンドペイントで色付けをしてから焼成して作られています. 工程ごとにそれぞれの職人さんがいて,全ての工程は手作業で行われています. 残念ながら,現在は工房も職人さんの数も減ってしまい,特に成型をする職人さんはもう数名しかいらっしゃらないとのことです.

ウランガラスは,ブラックライトで照らすと,図2のように,鮮やかな黄緑色に光ります.

ボヘミア2図2 ウランガラス製ボタンの蛍光発光

ウランガラスの蛍光スペクトル測定には,顕微蛍光分光測定システムを使いました. 図3に顕微蛍光分光光学系を示します. UV-LED光源(波長:365nm)の照射によって励起・放射された蛍光は,蛍光測定用ビームスプリッターによって励起光を含む380nm以下の短波長がカットされてから光ファイバー端面に結像し,CCD分光器へと導入されます.対物レンズはLU Plan Fluor 10x/0.3,光ファイバーはコア径φ200µm,分光器にはQEProHCを使用しました.

顕微蛍光分光光学系 図3 顕微蛍光分光光学系

図4に,本測定で使用した蛍光測定用ビームスプリッターキューブの分光特性を示します. エキサイターの長波長側カット,エミッターの短波長側カットともに,非常に優れたカットオフ特性であるため,励起波長365nmに近い390nmからのエミッション測定が可能です.

PL測定用BS 図2 PL測定用ビームスプリッターの分光特性

図5にウランガラスの蛍光スペクトルを示します.

ボヘミア5 図5 ウランガラスの蛍光スペクトル
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アレキサンドライトガラスの透過率スペクトル測定

図6は,ボヘミアガラスで有名なチェコの町,ヤブロネッツで作られたアレキサンドライトガラス製のボタンです(図1と同じデザインのボタンを選びました).

ボヘミア6図6 アレキサンドライトガラス製のボタン(チェコ,ヤブロネッツ)

アレキサンドライトガラスという名称ですが,鉱石のアレキサンドライトを含んでいるわけではありません. 作り方は,ウランガラス製ボタンと同様です. 材料に使用されているアレキサンドライトガラスは,自然光の下では紫色に,蛍光灯の下では水色に見えます. これは,ガラスに含まれる酸化ネオジウムが黄色い光を吸収する性質を持っているために,照明光の種類によって色が変化します.

ここでは,アレキサンドライトガラスに含まれる酸化ネオジウムの吸収を確認するために透過スペクトルを測定しました.
図7に透過スペクトル測定に使用した分光測定システムの構成を示します.

ボヘミア7 図7 透過分光測定システムの装置構成例

ハロゲン光源の光を光ファイバーの先端に装着した広帯域光ファイバーコリメーターでコリメート光にして光が透過するアレキサンドライトガラス領域(図6の12時方向の領域)に照射しました. ボタン表面に凹凸があるため,傾斜ステージを使って最も光量が多くなるように調整を行いました. 予め,エアブランクを測定しておき,リファレンス補正することで,光源の放射強度分布,CCDの感度特性などの分光特性を補正しています.

図8にアレキサンドライトガラス製ボタンの透過スペクトルを示します.

ボヘミア8 図8 アレキサンドライトガラス製ボタンの透過スペクトル

ボタンには湾曲や歪み,表面の凹凸があるため,測定コリメート光を全て受光することができません.そのため,測定強度は非常に弱くなります. 図8に示した透過スペクトルでは,リファレンス補正により測定系のアーティファクトは取り除かれていますが,透過率値はいい加減です.
※本来,このような測定には積分球を使用するべきなのですが,ここでは簡易的に積分球無しで測定しています.

図8のスペクトルを,ネオジウムを使った波長校正フィルター(例えば,HOYA株式会社製V11)の透過率スペクトルと比較してみてください. 両者の透過率スペクトル形状が一致していることを確認できます.

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