膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

光学フィルターの透過率スペクトル測定

CCD分光器を中心に構築した分光システムを使えば,さまざまな材料を多角的に分光測定分析することができます. ここでは,カメラレンズ用保護フィルターの透過率スペクトル測定例を示します.

カメラレンズ用保護フィルターの透過率スペクトル測定

一眼レフやミラーレスカメラの交換レンズでは,レンズ保護フィルター(Protection filter)を装着し,レンズに傷や汚れが付くことを避けるのが一般的です. レンズ保護フィルターは,誘電体多層膜技術を使って可視領域で非常に高い透過率を実現しています. また,表面には,撥水コートや撥油コートが施されている製品もあり,悪天候での撮影をサポートしてくれます.

図1は,カメラレンズ用保護フィルターの例です.

保護フィルター1図1 カメラレンズ用保護フィルター

フィルター表面における可視領域の反射率が非常に低いため,まるで黒い枠だけあるように見えます.

ここでは,手元にある数種類の保護フィルターの透過率スペクトルを測定して,比較してみました.
図2に透過率スペクトル測定に使用した分光測定システム(光学膜厚測定システム DF-1045RT)の構成を示します.

保護フィルター2 図2 透過分光測定システムの装置構成例

ハロゲン光源の光を光ファイバーの先端に装着した広帯域光ファイバーコリメーターでコリメート光にし,フィルター面に対して垂直に入射にしました(入射角:0°). 予め,エアブランクを測定しておき,リファレンス補正することで,光源の放射強度分布,CCDの感度特性などの分光特性が補正されて,正確な透過率スペクトル測定を行うことができます.

保護フィルターの製品による透過率特性の違いを見ていきましょう.

   ● K社製保護フィルター(一般品)

図3にK社製保護フィルター(一般品)の透過率スペクトルを示します.

保護フィルター3 図3 K社製保護フィルター(一般品)の透過率スペクトル

撮影に重要な可視領域(約400〜800nm)で透過率がほぼ1になるよう設計されていることが分かります.

   ● K社製保護フィルター(高級品)

図4にK社製保護フィルター(高級品)の透過率スペクトルを示します.

保護フィルター4 図4 K社製保護フィルター(高級品)の透過率スペクトル

図3の一般品の透過率スペクトルと比べると,より高い透過率を達成していることが分かります.

   ● N社製保護フィルター(高級品)

図5にN社製保護フィルター(高級品)の透過率スペクトルを示します.

保護フィルター5 図5 N社製保護フィルター(高級品)の透過率スペクトル

図3,図4と比べると,さらに透過率が高く,可視領域全体で透過率がフラットであることが分かります. さらに,撮影に有害な波長400nm以下の紫外光,800nm以上の近赤外光がカットされています. こうした透過特性の違い(製品設計の違い)は,透過率スペクトルの測定によって初めて知ることができます.

   ● 保護フィルター製品の透過率スペクトル比較

保護フィルター製品の透過率スペクトルを比較してみましょう. 図6は,保護フィルター各製品の可視領域の透過率スペクトルを縦軸拡大して重ね書きしたものです.

保護フィルター7 図7 保護フィルター製品の透過率スペクトル比較

いずれの製品も,可視領域の中心部で97%以上の透過率を達成していることが分かります. 3製品を比較すると,N社製高級品が,可視領域全域でフラットで高い透過率(99%以上)を実現していること,有害な紫外光,近赤外光をカットしていることから最も高性能な保護フィルターであることが分かります.

光学膜厚測定システム DF-1045RTは,広帯域収差補正コリメーターレンズを使った垂直入射コリメート光学系の採用により,正確な透過率スペクトルの測定が可能です.

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