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湾曲したレンズの反射防止膜の反射率測定
レンズのような湾曲したサンプル表面の分光測定は,サンプル面の法線方向調整が難しく,レンズ裏面からの反射光の影響を除去する必要があり,精度を出すのが難しい測定の一つです. この場合,光軸合わせ用ゴニオステージと顕微分光を組み合わせた顕微分光システムが有効です. 顕微分光を使用することで,共焦点面から遠く外れたレンズ裏面の反射光を除去することができます.
メガネレンズ反射防止膜の反射率スペクトル測定
カメラレンズ,メガネレンズを始めとする多くの光学製品の表面には,表面反射を低減させるために反射防止膜(ARコーティング:Anti-reflection coating)が施されています. 通常,レンズ表面は湾曲形状をしていて,測定領域が数ミリメートル角と大きい分光光度計やファイバー分光では,うまく測定することができません. レンズのような湾曲のあるサンプルでは,顕微分光を使うことが有効です. 顕微分光では,適当な倍率の対物レンズを選択することで,微小な測定領域を平面と見なすことができ,ゴニオメーターなどを使用すれば光軸を正確に合わせることが可能です. また,顕微分光の共焦点性を利用して,レンズ裏面からの不要な反射光を除去することができます.
測定には顕微分光システム DF-1037を使用しました. 図1に,標準的な顕微分光システム DF-1037の外観を示します
図2の写真は,ARコーティングの反射率スペクトル測定に使用したメガネです. ARコーティングの干渉色が異なることから,反射率スペクトルが異なっていることが予想されます. ここでは,青い干渉色のメガネを(a),緑の干渉色のメガネを(b)とします.
顕微分光システムを使って,約Φ20μmの領域で反射率スペクトル測定を行いました. 図3にメガネレンズ(a)とメガネレンズ(b)の反射率スペクトルを比較したグラフを示します.
可視領域に注目して(a)と(b)のスペクトルを比較してみましょう. 図3(a)の場合,波長 400 〜 550 nmで反射率が高くなっているため,干渉色はシアン色になっています. 一方,図3(b)は可視領域全体にきれいな反射防止が施されていて,典型的なマルチコーティングに見られる緑色の干渉色が見られます.
(a)の方が短波長側に光をより多く反射していることから,若干ではありますが,ブルーライトの透過が減少します. メガネレンズ(a)の方が,多少は目に優しいと言えるかも知れません.