膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

金属表面酸化膜の膜厚測定

金属表面にできる金属酸化膜は,光学的に膜厚測定をするのに適したサンプルです. 今回サンプルとして取り上げたビスマス骸晶の表面酸化膜のように工業的に生産されたものではない場合,場所によって膜厚が不均一で,表面状態も決して光学平面ではないため,ミクロ領域で測定できる顕微分光を用いた膜厚測定が非常に有効です.

ビスマス骸晶の表面酸化膜の膜厚計測

ビスマスの人工結晶は,骸晶と呼ばれる独特な結晶成長をすること,美しい虹色を呈することで知られています. その鮮やかな色彩は,加熱溶融後の結晶成長過程で生成される表面酸化膜の薄膜干渉によって作り出されています. ここでは,顕微分光法を用いて,骸晶表面の発色が異なる複数個所で反射率スペクトルを測定し,全ての測定反射率スペクトルの同時フィッティング解析によって,ビスマス酸化膜の膜厚および光学定数,金属ビスマス基板の光学定数を求めました [1].

[1] 田所 利康:「顕微分光法を用いたビスマス骸晶の干渉色分析」, 第80回応用物理学会秋季学術講演会 (2019) 北海道大学, 21a-PA1-14.

顕微分光光学系を示します. 分光測定と画像観察・画像撮影が同時または切り替えで行うことができます.

顕微分光光学系 図1 顕微分光光学系

ビスマス骸晶サンプルと反射率スペクトル測定領域を示します. 発色が異なる ① 〜 ⑤ の領域で,平坦で干渉色が均一な場所を探し,スポット径:約Φ40µmで反射率スペクトルを測定しました.

ビスマス骸晶サンプルと反射率スペクトル測定領域2 図2 ビスマス骸晶サンプルと反射率スペクトル測定領域

図3は,分光器側の光ファイバーからハロゲン光を入射して撮影したビスマス表面の写真です. 測定スポット径が約Φ40µmであることが確認できます.

測定ビームスポットのサイズ 図3 測定ビームスポットのサイズ

図4に,① 〜 ⑤ 領域における測定位置を示します. 画像中央の白丸がΦ40µmの測定スポットです.各領域の中でも,比較的均一性が高い場所を探して測定位置にしています.

測定位置 図4 領域① 〜 ⑤ における測定位置

図5に,得られた5つの測定反射率スペクトルとスペクトルフィッティング解析結果を示します.

測定反射率スペクトルの同時フィッティング解析結果 図5 測定反射率スペクトルの同時フィッティング解析結果

① 黄色から ⑤ ダークレッドのスペクトルが測定反射率スペクトル,細い黒線で表しているのがシミュレーションスペクトルです.

解析では,層構造を金属ビスマス基板上の単層膜とし,測定スポット内で膜厚がガウス分布していると仮定しました. 場所によって異なる発色を示す起源が膜厚の違いであると予想して,膜および基板の誘電関数は全測定領域で同一とし,誘電関数もフィッティング変数に加えました.

各測定領域における表面酸化膜の収束膜厚値,膜厚バラツキ(ガウス分布の1/e 全幅)を示します. 良好なフィッティング収束結果から,比較的均質で平坦な表面酸化膜が形成されているものと推測されます.

表1 各測定領域における表面酸化膜の収束膜厚値,膜厚バラツキ 各測定領域における表面酸化膜の収束膜厚値,膜厚バラツキ

図6に解析で得られたビスマス表面酸化膜の光学定数スペクトル,図7にビスマス結晶の光学定数スペクトルを示します.

ビスマス酸化膜の光学定数収束値 図6 ビスマス酸化膜の光学定数収束値
ビスマス結晶の光学定数収束値 図7 ビスマス結晶の光学定数収束値
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