膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

希土類添加cBN単結晶の顕微PLスペクトル測定

顕微分光システムDF-1037シリーズは,紫外LED(波長:365nm)などの励起光源とPL測定用ビームスプリッターキューブを装着することでフォトルミネッセンス(PL: photoluminesence)測定を行うことができます.ここでは,希土類添加立方晶窒化ホウ素単結晶を測定対象にした顕微フォトルミネッセンスのスペクトル測定例を示します.

ユーロピウムドープ立方晶窒化ホウ素単結晶の顕微PLスペクトル測定 [1], [2]

立方晶窒化ホウ素(cBN)は天然には産出せず,高温高圧下の単結晶合成プロセスによって作製される高硬度物質で,ダイヤモンドに次ぐ硬度を有しているため,現在の機械加工分野において欠くことのできない材料です. 一方,cBNは,6.2eV程度の大きなバンドギャップを持つこと,p型およびn型半導体の合成が可能なことから,パワーデバイス,紫外発光半導体素子,光学材料など硬質材料以外の多様な応用の可能が広がっています.
近年,cBN結晶に希土類元素をドープして,発光特性を付与する試みが成されています. ここでは,ユーロピウムをドープしたcBN単結晶をサンプルにして行った,紫外光励起による蛍光発光スペクトルの顕微分光測定結果を示します.

[1] Atsuko Nakayama, Takashi Taniguchi, Yoichi Kubota, Kenji Watanabe, Shunichi Hishita, and Hisao Kanda: "Characterization of luminous-cubic boronnitride single-crystals doped with Eu3+ and Tb33+ ions", Appl. Phys. Lett. 87, 211913 (2005).
[2] 谷口尚, 渡邊賢司, 中山敦子:「窒化ホウ素単結晶の高圧合成」, 高圧力の科学と技術Vol. 15, No. 4 (2005) pp.284-291.

図1は,波長:365nmのUV-LED光照明下で撮影したユーロピウムドープcNB結晶の顕微観察画像です(サンプルご提供:物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 谷口 尚 様).
赤く見えるのが紫外光励起によって蛍光発光している部位です. 図1の撮影では,10xの対物レンズを使用しており,画像対角は約2mmです.
ちなみに,青色の背景はプラスチック容器が発する蛍光,所々に見られる青白い発光はホコリによるものです.

cNB1 図1 ユーロピウムドープcNB結晶の蛍光発光

図2に顕微PL分光光学系の概要を示します. UV-LED光源(波長:365nm)の紫外光照射によってサンプル内の電子が励起され,フォトルミネッセンス(PL: photoluminesence)が放出されます. 放射されたPL光は,PL測定用ビームスプリッターによって励起光を含む390nm以下の短波長がカットされ,PL光を含む可視領域の光のみが光ファイバー端面に結像し,CCD分光器へと導入されます.
対物レンズはLU Plan Fluor 10x/0.3を使用しました. 本PLスペクトル測定では,微弱光を高感度測定するために,光ファイバーには太いコア径φ1000µmを採用し,分光器には高感度,低ノイズ,18bitADC搭載のQEProHC(スリット幅:50µm)を使用しました.

顕微PL分光光学系3 図2 顕微PL分光光学系の概要

図3に,本測定で使用したPL測定用ビームスプリッターの分光特性を示します. エキサイターの長波長側カット,エミッターの短波長側カットともに,非常に優れたカットオフ特性であるため,励起波長365nmに近い390nmからのエミッション測定が可能です.

PL測定用BS 図3 PL測定用ビームスプリッターの分光特性

図4に,ユーロピウムドープcBN結晶の顕微PLスペクトル測定結果を示します. 測定波長範囲は400 ~ 900nmです. 顕微鏡下で蛍光画像を見ながら,蛍光発光領域に位置合わせてスペクトル測定を行いました.

cNBのPLスペクトル 図4 ユーロピウムドープcNB結晶の顕微PLスペクトル測定結果

図4の測定では光量を重視し分光器の分解能を犠牲にしたため,ラインスペクトルがなまっていますが,文献 [1], [2] とよく一致した蛍光スペクトルが得られています.

本測定例のように,顕微分光システムDF-1037シリーズにPL測定オプションを追加することで,様々なサンプルで簡便に顕微PLスペクトルの測定を行うことができます.

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