膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

蓄光トンボ玉の燐光スペクトル測定

顕微分光システムDF-1037シリーズは,紫外LED(波長:365nm)などの励起光源とPL測定用ビームスプリッターキューブを装着することで微小領域における蛍光・燐光測定を行うことができます.ここではケラマブルーと呼ばれる色彩を持つ蓄光トンボ玉の顕微燐光スペクトル測定例を示します.

ケラマブルー蓄光トンボ玉の顕微燐光スペクトル測定

沖縄の土産品に,慶良間(けらま)諸島の海の色のようなブルー(通称:ケラマブルー)の蛍光・燐光を発する蓄光トンボ玉というものがあり,ネットショップでも購入することができます. ここでは,顕微分光システムを使った蓄光トンボ玉の燐光スペクトル測定について解説します.

図1は,ネットショップで購入したケラマブルーの蓄光トンボ玉で,直径は12mm程度です.

ケラマ1 図1 ケラマブルーの蓄光トンボ玉

図2 ~ 4は,トンボ玉を固定し同じ画角で撮影した図2:可視光照明画像,図3:波長:365nmの紫外光で励起した蛍光画像,図3:励起光遮断後の燐光画像です. 蛍光は励起一重項状態から基底一重項状態への遷移の際に起こる発光で,発光持続時間が短いものを指します. 一方,燐光は励起三重項状態から基底一重項状態への禁制遷移の際に起こり,蛍光に比べて長い発光寿命が特徴です.

ケラマ2 図2 可視光照明画像
ケラマ3 図3 紫外光(波長:365nm)励起の蛍光画像
ケラマ4 図4 励起光遮断後の燐光画像

図4から,場所によって燐光発光の色が違っていることが分かります. 微小領域の分光測定ができる顕微分光システムを使い,発光色の異なる燐光のスペクトルを測定しました. 図5に顕微PL分光光学系の概要を示します.

顕微PL分光光学系5 図5 顕微PL分光光学系の概要

UV-LED光源(波長:365nm)の紫外光照射によって,サンプル内の電子が励起され,蛍光・燐光が放出されるようになります. 励起紫外光を切ると,蛍光は速やかに消え,燐光のみが発光し続けます. 放射された燐光は,対物レンズ(LU Plan Fluor 10x/0.3),結像レンズ(焦点距離:200mm)を通って光ファイバー端面に結像され,CCD分光器へと導入されます.
本測定では,トンボ玉のガラス越しにスペクトル測定するため,非常に大きな球面収差を受けながらの測定になります. 微弱光を高感度測定するために,光ファイバーは太いコア径φ1000µmを採用し,分光器には高感度,低ノイズ,18bitADC搭載のQEProHC(スリット幅:50µm)を使用しました.

顕微鏡下で燐光画像を見ながら,発色の異なる領域を探して位置合わせをし,発光スペクトル測定をしました. 図6 ~ 8は,燐光の発色が異なる領域の撮影例です. 以下,測定した6つの燐光スペクトルは,測定した領域の燐光色(Yellow,Gleen,Turquoise,SkyBlue,Blue,DerkBlue)で呼ぶことにします. 図6 ~ 8の画像は,トンボ玉の大きな球面収差のため,焦点が流れていて結像状態がよくありません.

ケラマ6 図6 燐光の発色が異なる領域の撮影例1:Yellow,Gleen,Turquoiseの領域
ケラマ7 図7 燐光の発色が異なる領域の撮影例2:Gleen,Turquoise,SkyBlueの領域
ケラマ8 図8 燐光の発色が異なる領域の撮影例3:SkyBlue,Blue,DerkBlueの領域

図9に,ケラマブルー蓄光トンボ玉の燐光発色が異なる領域におけるスペクトル測定結果を比較します. 測定波長範囲は400 ~ 750nmです. スペクトルの線色は,見た目の色に合わせてあります.

ケラマ9 図9 ケラマブルー蓄光トンボ玉の燐光発色が異なる領域のスペクトル比較

燐光スペクトルは,波長:450nm近辺の発光ピークと波長:500 ~ 600nmのブロードな発光ピークの2つで構成されていることが分かります. ここで興味深いことは,450nm近辺の発光ピークでは発光中心波長がほとんど動かず,その強度が領域によって変化しているのに対して,波長:500 ~ 600nmのブロードな発光ピークは測定領域によって波長が大きくシフトしていることです. このスペクトル測定結果からだけでは,何が燐光発光しているかを突き止めることはできませんが,何か2つの発光要素がありそれらの比率によって燐光色の変化が作り出されていると推測されます.

本測定例のように,顕微分光システムDF-1037シリーズにPL測定オプションを追加することで,簡単に顕微燐光スペクトルの測定を行うことができます.

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