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誘電関数って何だ?
本講座は,光物性の入門講座です. 光の伝搬,屈折や反射といった最も基本的な光の振る舞いを記述することから初めて,光と物質の相互作用,Lorentzモデル,Drudeモデルの誘電関数にいたるまでの光物性に関する基礎について解説します. 基本概念の説明,基本式の導出など一般的な教科書では省略されがちな内容も記述するよう心がけました.
はじめに
本講座では,光の伝搬や屈折など最も基本的な光の振る舞いから分光計測に欠かせない誘電関数の基礎に話題を絞り,「光は波として振る舞い,電荷は光の電場に対しては古典力学応答する」いわゆる古典光学の立場で解説していきます.古典光学と聞いて,「いまさら古典!?」と侮らないでください.分光計測で取り扱う透過,屈折,反射,干渉,回折といった光の伝搬に関する光学現象は,古典光学で十分精密に記述でき,誘電体多層膜を始めとする光デバイスの設計・評価は,実際,ほとんど全て古典光学で行われています.古典光学は,その名前に反して非常にエレガントで,最も実用的な光学なのです.本講座を通じて,みなさまにエレガントで実用的な光学の世界をお楽しみ頂ければ幸いです.
なお,本講座では,できるだけ,光学現象の物理的イメージと数式の意味とを関連付けて解説しましたが,紙面の都合で割愛した部分も多いため,総合的な理解のためには,参考書 [2]〜[6] などでフォローされることをお勧めいたします.
[1] E.D. Palik (editor): "Handbook of Optical Constants of Solids", Academic Press, New York (1985)
[2] 大津元一監修, 田所利康・石川謙著:「イラストレイテッド光の科学」, 朝倉書店 (2014) >> 書籍紹介ページへ
[3] 田所利康:「ビジュアル解説 光学入門」, 朝倉書店 (2024) >> 書籍紹介ページへ
[4] E. Hecht: "Optics 5th ed.", Pearson Education (2016),
〈訳書〉尾崎義治,朝倉利光訳:「原著5版 ヘクト 光学 I, II」, 丸善 (2002)]
[5] 江馬一弘:「光物理学の基礎」, 朝倉書店(2010)
[6] R. P. ファインマン他:「ファインマン物理学 II, III, IV」, 岩波書店(1991)
※ ここでは,高度な教科書は避け,通読できる本を,内容が平易な順にリストしました.
目次
- 0. はじめに
- 1. 誘電率の基礎
- 2. 「光の足し合わせ」を視覚的に理解する
- 3. 電気双極子放射のミクロな重ね合わせ
- 4. 媒質中で光が遅くなるとは限らない
- 5. 透過光の伝わり方と屈折率の関係
- 6. Lorentz振動子
- 7. Lorentz振動子の誘電関数
- 8. 誘電率と屈折率を広い範囲で見渡そう
- 9. 金属の光学応答