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構造色とは: 6. 複雑な構造が作る構造色
6. 複雑な構造が作る構造色
3次元的な周期構造など,さらに複雑な周期構造の干渉・回折によって生じる構造色を紹介します.
6.1 オパール
鉱物の一種であるオパールは遊色を持ち,その美しさから宝石として珍重されています. 遊色とは,オパール中で凝集した球状のシリカ微粒子が3次元的な波長程度の周期構造を作って,回折によって色付いて見える現象です. 3 次元構造による回折は,角度により回折面が異なるために,見える色調が見る方向によって変化します.
6.2 アンモライト
アンモライト ( ammolite ) は,アンモナイトの化石表面が別の鉱石に置き換わった「置換化石」と呼ばれるもので,北アメリカのロッキー山脈の東側でのみ産出し,宝石として珍重されています. アンモライトの発色の起源は,オパール状の構造が発する遊色です. 遊色が美しい鉱物のオパール(図6-1 )は二酸化ケイ素 ( SiO2 ) が主成分なのに対して,アンモライトのオパール状構造は生物起源の炭酸カルシウム ( CaCO3 ) が主成分です.
6.3 シリカナノ粒子
オパール構造は,人工的に再現することもできます. 写真は,水に分散させた粒径 150µm の球形シリカナノ微粒子(富士化学株式会社製)に光を当てた時に見られる遊色です. 光の当て方で,色合いが変化します. 球形シリカナノ微粒子は,右SEM写真のように粒径精度が非常に高く,水に分散・凝集した微粒子ドメインごとにきれいな光の回折を起こし,複雑な色彩の遊色となって私たちの眼に入ってきます.
6.4 カワセミ
カワセミの羽根の青色は,構造色だといわれています.
6.5 クジャク
クジャクの羽根の色も,構造色だといわれています.
6.6 モルフォ蝶
構造色の代表例がモルフォ蝶です. モルフォ蝶の光沢のある青い色は,鱗粉に刻まれた微細構造によって作り出されています [3] .
[3] 木下修一 著:『モルフォチョウの碧き輝き ー 光と色の不思議に迫る』,化学同人(2005).
鱗粉を電子顕微鏡で拡大すると,断面が棚状の繰り返し構造が見られます. 図6-7(b) のように,鱗粉に入射した光が,間隔約200 nmの繰り返し構造で反射された,どの隣り合う光路でも,往復の光路差が約 400 nm になるため,波長 400 nm 付近だけが強め合って,輝く青色を作り出しています. 棚の高さや棚同士の間隔にバラツキがある複雑な構造をしているため,単純な干渉 / 回折では得られない深みのある色が生まれています.
ディディウスモルフォの鱗粉は,透明な上層鱗と青く輝く下層鱗の二層構造になっています. 顕微鏡で拡大してみると,下層鱗の棚構造の列が確認できます.