膜厚測定,光学定数測定,複素屈折率・複素誘電率シミュレーションのテクノ・シナジー

SCOUT倶楽部
スペクトル解析ソフトウエアSCOUT:クイックスタート
本講座は,SCOUT ver. 3.04に基づき作成されています.バージョンの違いにより多少操作が異なる箇所があります. 例えば,ver. 3.40以降では,Formula One Workbook Designerを使用せずにワークシートの追加が行えるようWorkbookの仕様が変更になっています.

はじめに

SCOUT は, 豊富な誘電関数モデルと光学ライブラリー, 柔軟な光学モデル記述, スマートなフィッティングストラテジーを有する非常に高機能なスペクトル解析ソフトウエアです. また, ほとんど全ての分光装置で測定したスペクトルデータを読み込むことができ, 解析することが可能です. ここでは, SCOUT を用いたスペクトル解析の概要を知っていただくために, BK7 基板上の TiO2 膜の反射率スペクトル解析を例にして, とにかく SCOUT を動かしてみましょう. なお, SCOUT の操作法詳細は, SCOUT 技術マニュアルをご参照ください.

1. フィッティング解析の流れ

まず, SCOUT を使って行うスペクトルフィッティング解析の大雑把な流れを確認しておきましょう. スペクトルフィッティング解析は, サンプルの光学モデルを基に計算されるシミュレーションスペクトルと測定スペクトルをフィッティングすることにより, 膜厚や光学定数などのサンプルパラメーターを決定する解析法です. スペクトルフィッティング解析では, 光が入射することで物質が応答するという因果律 ( Kramers-Kronig 関係) によって物質の光学定数 ( n , k ) が決定されることを基本にして, 分光スペクトルに含まれる材料物性情報の定量的な解析を行います. フィッティング解析では, 次に示すような 5 つのステップにより最終的な結果である膜厚や光学定数を決定することができます.
スペクトル解析の流れ スペクトル解析の流れ
  • スペクトル測定
    分光光度計などを用い, 試料の反射率スペクトルを測定します. サンプル基板には, 光学定数スペクトルが既知のものを用いるか, サンプルに使用したものと同一基板のスペクトルを測定し, 以下の手順に従って予め基板の誘電関数を求めておきます.
  • 光学モデルの構築
    サンプルの層構造を記述し, 各層の誘電関数モデルを選択する. 求めたい膜の光学定数スペクトルを推測して, 誘電関数モデルの各パラメーター初期値を調整しておきます. 多くの場合, 光学定数ライブラリー, 文献値などを基に, 予想される膜の誘電関数モデルを予め作っておくことが有効です (本クイックスタートでは, SCOUT 光学定数ライブラリーを用います) . また, 各層の膜厚初期値を決め, 光学モデルのどのパラメーターをフィッティング変数にするかを選択します.
  • シミュレーション
    (2) で作成した光学モデルからシミュレーション反射率スペクトルを生成します. 次のフィッティングを実行する前に, 測定データとシミュレーションスペクトルを見比べて, できるだけ光学モデルの各パラメーター初期値を修正しておくといいでしょう.
  • パラメーターフィッティング
    測定データとシミュレーションスペクトルのフィッティング誤差が最小になるように, SCOUT が各パラメーター値を自動調整します. フィッティング誤差が所定の値を下回るか, 所定の計算反復回数を超えるとフィッティングは打ち切られ, 収束結果として膜の光学定数, 膜厚などの値が得られます.
  • 収束結果の評価
    得られた収束結果のフィッティング誤差が大きかったり, 物理的にあり得ない場合, 局所的な極小値 (ローカルミニマム) に収束している可能性があります. もちろん, この時の収束結果は解として不適当なので, (2) に戻りシミュレーション条件を再検討する必要があります. 具体的には, 光学モデルを構築し直す (例えば, 誘電関数モデルの変更, 表面ラフネス層の追加など) , より適正な初期値を探す, フィッティングに使用するパラメーターを選択し直すなどの作業を行った後, 再度フィッティングを実行します. 納得が行く収束結果が得られるまで, (2) ~ (5) の手順を繰り返します.

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