膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

スペクトル解析ソフトウェア SCOUTユーザーのための技術情報スクエア SCOUT倶楽部

SCOUT講座1 「コンピュータシミュレーションによる光学スペクトル分析」 (11/13)

5. 実例

5.1 あらまし

最後に, 既に示されているアプリケーション例に加えて, より高度でシンプルなスペクトルシミュレーションの応用を見ていきましょう. ここで示す応用例は, 次の通りです.
  • ガラス基板上 Ag 膜の反射率スペクトルの自動解析
  • エリプソメトリーによる新しい未知の半導体の解析
  • CdS 膜の反射率/透過率同時解析
  • 複数赤外スペクトルの解析による分子配向方位決定
  • 8 つの反射率スペクトルの同時解析による多孔質プロファイルの決定
  • 反射率とエリプソメトリーを組み合わせた薄膜解析

5.2 バッチフィットの例

ひとたび解析のための光学モデル開発されてしまえば, 一連の多くのスペクトルを処理するためのスペクトルシミュレーションを自動化することができます. ここでは, Ag 膜堆積デバイスのスパッタリングレイトの決定を目的としたシンプルな例を示すことにします.
サンプルは, スパッタリング時間:1 s ~ 23 s の系列を準備しました. 光学定数ライブラリーデータに基づくシンプルな Ag 膜 / ガラス基板モデルで, 反射率スペクトルを解析しました. Ag 層の膜厚を唯一の未知パラメーターにしたため, フィッティングは非常に早く収束します.
図24図24

図25のグラフは, スパッタリング時間に対して得られた膜厚値をプロットしたものです. グラフの傾斜から, スパッタリングレイトは 1.3 nm/s であると推定できます.
図25図25

また, 図26に示したフィッティング誤差のプロットから, 膜厚が 8 nm より薄い領域でフィッティング誤差が悪化していることが分かります. この領域では, モデルがうまく合っていません. これは, ガラス基板上に Ag がアイランド成長することが原因しています. つまり, ある膜厚以下では, 連続的に Ag 層が成長するのではなく, アイランド構造になるのです. こうした場合, Ag と空気の混合を仮定した有効媒質近似を用いるのが, より適切です.
図26図26

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