膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

分光エリプソメトリーとは: 2. 偏光とは

分光エリプソメトリーとは?

2. 偏光とは

可視光を中心とする波長領域の電磁波を光と呼びます. 図2-1 のように,互いに直交するサインカーブ状の電場 E と磁場 B [注] が,両者の外積 ( E × B ) 方向 (電場 E の振動方向から磁場 E の振動方向に右ネジを回したときに,ネジが進む方向)に進む横波です.

図2-1 光(電磁波)の伝搬
図2-1 光(電磁波)の伝搬
【注】 本来,磁束密度 B ,磁場 HB ≡ μ0 Hなので,磁場 H と表記するところですが,多くの教科書で B を磁場と呼び, E-H 対応ではなく E-B 対応で議論しています [3] 〜 [6] . 本稿もその流儀に習いました.

[3] R. P. ファインマン他著,富山小太郎訳:「ファインマン物理 学 II」, 岩波書店 (1991).
[4] E. Hecht: “Optics (5th ed.)”, Pearson Education (2016).
      [訳書 E. ヘクト著,尾崎義治,朝倉利光訳:「原著5版 ヘクト 光学 I, II」, 丸善 (2018)].
[5] 田所利康:「ビジュアル解説 光学入門」, 朝倉書店, (2024). >> 書籍紹介ページへ
[6] 江馬一弘:「光物理学の基礎」, 朝倉書店 (2010).

光の電場振動が特定方向に偏った光を,偏光といいます. 図2-1 に描かれている電磁波の概念図は,一つの面内でサインカーブ状に振動する電場として光を図示されていますが,実は,それは直線偏光と呼ばれる偏光の状態を表しています. 一方.私たちが日頃目にする太陽や月からの光,身の周りの風景から来る光は,電場振動の方向や位相がランダムに混じり合った状態の光(ランダム偏光)で,自然光と呼ばれます.

自然光から直線偏光を作り出すものを,偏光子と呼びます. 偏光フィルムは,最も身近な偏光子です. 偏光フィルムは,ヨウ素の針状結晶を含んだ高分子(ポリビニルアルコール)を,一方向に引き延ばして作製されます. 引き延ばされたヨウ素の針状結晶は,一方向に揃い,結晶が揃った方向の偏光を吸収して,それと直交する偏光のみが透過する偏光子になります.

図2-2は,偏光フィルムから,特定方向の直線偏光のみが出射されるようすを表しています. 透過する偏光の振動方向を透過軸と呼びます. 入射光は,偏光方向と位相がランダムな自然光ですが,図示の都合上,振動方向がランダムな矢印として表しています. 偏光子では,透過軸方向の振動成分のみが透過するため,出射偏光の強度は,入射自然光の約半分になります.

図2-2 偏光フィルムの働き
図2-2 偏光フィルムの働き

2 枚の偏光フィルムに光を透過させると, 2 枚の偏光フィルムの角度関係によって,図2-3 のように,透過する光の強度が変化します. (a) 透過軸が平行な場合,1枚目で作られた直線偏光は,そのままの強度で2 枚目を透過します. この偏光配置を平行ニコルと言います. (b) 出射側の偏光子 (検光子と呼ぶ) を回転させていくと,次第に,透過光強度が減少し,(c) 透過軸が直交した状態では,光はほとんど透過しなくなります. この状態を,直交ニコルと呼びます.

図2-3 偏光フィルムの回転と出射する光の強度の関係
図2-3 偏光フィルムの回転と出射する光の強度の関係

任意の偏光は,2つの基本的な偏光 Ep , Es のベクトル和で表せます. 偏光状態を決めるパラメーターは,2つの偏光 Ep , Es の位相差 Δ = Δp - Δs と, Ep と Es の振幅の比 Ep / Es です. 位相差 Δ は,波動 Ep , Es の初期位相をそれぞれ Δp , Δs として,Δp を基準に Δs の進み方/遅れ方を表します. 図2-4 は,位相差 Δ を変化させたときに現れる直線偏光,楕円偏光,円偏光のようすを示しています.

図2-4 位相差 Δ と直線偏光,楕円偏光,円偏光
図2-4 位相差 Δ と直線偏光,楕円偏光,円偏光

2 つの偏光 Ep , Es が同じ位相 Δ = Δp - Δs = 0° で,同じ振幅 Ep = Es の場合,合成される偏光はxy平面上45°方位の直線偏光になります. Ep が進むか,Es が遅れるかして,位相差 Δ = 90 ° = π/2 = λ/4 が生じた場合の合成波は,合成電場ベクトルが時間と共に円周上を左回転する左回り円偏光,位相差が Δ = -90° = - π/2 = - λ/4 の場合には,右回り円偏光になります. 一般的には,偏光 Ep , Es が任意の振幅と位相をとるため,合成される偏光は楕円偏光になります. 偏光解析法を表す英語名のエリプソメトリー ( Ellipsometry ) は,偏光解析が扱う偏光状態が一般的に楕円偏光であることから,「楕円」を表すギリシャ語 Ellipse から名付けられました. 図2-5 に位相差 Δを0から 2 π まで変化させたときの偏光状態変化を示します.

図2-5 位相差 Δ の増加に伴う偏光状態変化( Ep = Es の場合)
図2-5 位相差 Δ の増加に伴う偏光状態変化( Ep = Es の場合)

 

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