膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

分光エリプソメトリーとは: 4. 薄膜中の光の伝搬

分光エリプソメトリーとは?

4. 薄膜中の光の伝搬

反射光 / 屈折光の出射角度は反射の法則と屈折の法則によって決まり,反射光 / 屈折光の振幅はフレネル係数で求まります. これで,薄膜サンプル中における光の振る舞いを正確に記述することができるようになりました. ここでは,図4-1 のように,屈折率 n 0 の媒質中に支持基板なしで存在する屈折率 n 1 の膜(自己保持膜)を例に,膜内で起こる多重反射について考察しましょう.

図4-1 自己保持膜の多重干渉
図4-1 自己保持膜の多重干渉

自己保持膜の代表例は,シャボン玉です. 空気(屈折率 n 0 )から薄膜(屈折率 n 1 )に入射する場合の振幅反射係数 / 振幅透過係数を r01,t01 ,逆に薄膜から空気に入射する場合の振幅反射係数,振幅透過係数をそれぞれ r10,t10 と表すことにします.

さて,図4-1 で,振幅 1 の光が左上方より入射角 θ0 で薄膜に入射されたとしましょう. 入射光は,界面 1 に出会うと一部が反射され振幅 r01 の反射光(これを 0 次反射光と呼びましょう)を形成し,残りの光は界面を透過し振幅 t01 の透過光となります. 透過光は膜内を進み,界面 2 に出会うと,さらに反射光と透過光に分割されます. その後は,透過光が界面に出会う度に,反射光 / 透過光に分配されながら,膜内を多重反射していきます. 我々が観測する反射光とは,膜内を多重反射した結果生じる全ての反射光を足し合わせたものです.

ここで,膜内を 1 往復してくる反射光( 1 次反射光と呼びます)の振幅に注目しましょう. 振幅 1 の入射光が界面 1 の透過によって振幅が t01 倍されます. 膜内を進み界面 2 の反射によって,その振幅は r10 倍され,さらに,界面 1 の透過で,その振幅は t10 倍されます. その結果,1次反射光の振幅は t 01 r10 t10 になります.

図4-1 に示す 1 次反射光の振幅に掛けられた exp (-i 2β ) は位相項です. 膜内を 1 往復する 1 次反射光は, 0 次反射光に対して,余分な光路長を走る分だけ位相が遅れます. 光が膜を一回通過するときの位相遅れを β として, 1 次反射光の位相項 exp (-i 2 β ) は,光が膜内を 1 往復する間に位相が 2 β 遅れることを表す複素数です. β は,位相膜厚 ( film phase thickness ) と呼ばれます.

式

図4-3 のように,膜の厚さ d ,屈折角 θ1 (入射角 θ0 ,屈折率 n 1 をスネルの式に代入すれば求まります)から,膜内を余分に走る光路長 l が幾何学的に求まり,膜の屈折率 n 1 を乗算することで位相膜厚 β が求まります.

図4-3 位相膜厚
図4-3 位相膜厚

位相を含めた振幅反射係数を複素振幅反射係数と呼びます. 全ての高次の反射光に対して同様の振幅計算を行い,それらを全て足し合わせることで,多重干渉が含まれた反射光の複素振幅を求めることができます.

式

実際の薄膜試料はもっと複雑な層構造を持ちますが,上記のような複素反射振幅係数計算を界面の数だけ繰り返すことで,全ての経路の反射光を足し合わせてトータルな反射光の振幅を求めることが可能です.図4-5 に基板上の一層膜モデルを示します.

図4-5 基板上の一層膜モデル
図4-5 基板上の一層膜モデル

図4-5 の一層膜モデルで,全ての反射光束を足し合わせることで反射干渉光が求まり,全ての透過光束を足し合わせることで透過干渉光を表すことができます.一層膜モデルの振幅反射係数 r012 ,振幅透過係数 t012は,次のように表されます.

式

[5] 田所利康:「ビジュアル解説 光学入門」, 朝倉書店, (2024). >> 書籍紹介ページへ

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