HOME > 徒然「光」基礎講座 > 光学異方性媒質中の光の伝搬: 7. 常光線と異常光線 1
光学異方性媒質中の光の伝搬: 光線と異常光線 1
7. 光線と異常光線 1
ここから,等方性媒質である空気(真空)から異方性媒質に光が入射された場合の異方性媒質中の光の進み方を見ていきましょう. 本講座第7回から第9回では,光線速度面(ray surface)を用いた作図により異方性媒質中の常光線/異常光線の屈折方向を求めていきます.
7.1 入射条件 1(光学軸:界面に垂直,光入射:垂直)
光線速度面とは,光線の速度ベクトルを s とし, s を全ての方向についてプロットした面のことで,図15の等速度面の座標を 1/c 倍したものです. 点光源から空間的に広がる波面は,光線速度面と相似形になります. 光線速度面は,等方性媒質では光源を中心とした半径 1 / n の球,1軸性結晶では長軸が 1 / no ,短軸が 1 / ne で長軸を回転軸とする回転楕円体になります.
まず,図17に示す光学軸が入射面内にあり空気-媒質界面に垂直な異方性媒質への光入射について見ていきましょう.
ここでは,異方性媒質の屈折率楕円体を紙面内で回転させて常光線/異常光線の伝搬を調べるので,紙面を貫く方向の偏光を常光線,紙面内にある偏光を異常光線とします.
図には,常光線と異常光線の光線速度面の断面が描かれています.
前節で述べた通り,光学軸に沿って光が入射された場合,異常光線も常光線と同じ位相速度で進むので,常光線と異常光線の光線速度面は光軸方向で一致します.
その時の波面は,ホイヘンスの原理から求めることができます.
図17の異常光線を例に,その波面を求めたのが図18です.
ある時刻,入射波面が界面に位置し,界面に並んだ微小光源列から2次波が放出されるとします. 波面の伝搬は,波面の各点から放出される2次波の包絡線をとることで理解できます. 各点から放出される2次波は,図17で示した異常光線の光線速度面(回転楕円体)で広がることから,2次波の包絡線から得られる異常光波面は界面と平行になります. また,異常光線の進む方向は,異常光線速度面と異常光波面との接点を光源から見通す方向であり,図18で分かるように,界面で屈折することなく直進します. 波面法線ベクトルを a とすると,異常光波面の波面法線ベクトル ae は異常光線の方向と一致します. 常光線の波面や光線の進行方向も同様の方法で求めることができます.
図19で分かるように,入射条件 1の常光波面,異常光波面は界面に平行な同一面であり,両者の波面法線ベクトル ao , ae も一致します. つまり,入射条件 1(光学軸:界面に垂直,光入射:垂直)の場合,光は等方性媒質中と同じように振る舞います.