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光学異方性媒質中の光の伝搬: 光線と異常光線 3

光学異方性媒質中の光の伝搬

9. 光線と異常光線方 3

第8回に続き,異方性媒質に光が斜め入射した場合の常光線,異常光線の進み方についても考えてみましょう.

9.1 入射条件 4(光学軸:斜め,光入射:斜め)

図22の異方性媒質に,光が斜め入射した場合の常光線,異常光線の進み方を示したのが図24です.

図24 常光線/異常光線の進み方(6)
図24 常光線/異常光線の進み方(6)

さらに,図24の異方性媒質を入射面内で 90° 回転させたのが図25です.

図25 常光線/異常光線の進み方(7)
図25 常光線/異常光線の進み方(7)

図24,図25で分かるように,同じ入射角で光を入れても,異方性媒質の光学軸が違う方向を向いていれば,全く異なる光伝搬をします.

さて,作図で異常光線の屈折方向を求めていくことにしましょう. 図24,図25には,常光線,異常光線の光線速度面に加えて,反射光の光線速度面が描いてあります. まず,反射光の光線速度面と接する反射光波面を求め,その波面と界面との交線 (紙面を貫く方向)を L とします. 常光波面および異常光波面は,反射光波面と交線 L を必ず共有します. また,常光波面および異常光波面はそれぞれの光線速度面に接するという条件から,常光波面および異常光波面を幾何学的に求めることができます. 光線速度面と波面との接点を光源から見通す方向に引けば光線の方向が得られます.

図24,図25いずれの場合でも,常光線の屈折角は常にスネルの法則に従います. 一方,異常光線は光学軸に近づくように曲がるため,光が光学軸方向から入射される図24では常光線より大きな屈折角になり,光学軸が図24から 90° 回転した図25では常光線より小さい屈折角になります.

ここでは光学軸が入射面(紙面内)にある場合について説明しましたが,光学軸が面外にある場合には光線速度面と波面との接点が入射面内にあるとは限りません. そのため,平面的な作図では表すことができず,3次元的な扱いが必要になって,問題は複雑になります.

おわりに

本講座は,文献 [1] , [2] の内容をベースにWeb記事にまとめたものです. 本講座では,光学異方性媒質の中でも理解しやすい一軸性結晶に話題を絞り,屈折率楕円体や作図を使って異方性媒質中の光の伝搬の仕方について解説しました. 光学異方性についてより詳しく勉強されたい方は,結晶光学の教科書や結晶光学に言及している光学の教科書 [4] をご参照いただくのがいいでしょう.

参考文献

[1] 田所利康:「物質中の光の振る舞いはどのように決まるのか (4) ー 光学異方性媒質中の光の進み方 ー」,日本液晶学会誌 EKISHO, 17, 4 (2013) pp234-244.
[2] 田所利康:「ビジュアル解説 光学入門」, 朝倉書店, (2024).
[3] 山口留美子: 「日本液晶学会サマースクール2003予稿集」, 日本液晶学会 (2003) 19-32.
[4] 例えば,黒田和夫: 「物理光学」, 朝倉書店 (2011) 33-90.

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