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光学異方性媒質中の光の伝搬: ジョーンズベクトル

光学異方性媒質中の光の伝搬

2. ジョーンズベクトル

ここでは,代表的な偏光の記述法であるジョーンズベクトルを取り上げて解説します [注2] .

【注2】 エリプソメトリーやポラリメトリーの解析では,ストークス・ベクトル,ミュラー行列,ポアンカレ球を用いることが多いのですが,紙面の都合で,ジョーンズベクトル,ジョーンズ行列に絞って説明します.

2.1 規格化ジョーンズベクトル

アメリカの物理学者ジョーンズ(R.C. Jones)によって考案されたジョーンズベクトル(Jones vector)は,直交する電場 ExEy から定義される行列で,偏光状態の記述が簡略であるという利点を持ちます.

前項で述べたように,任意の偏光状態は,直交する基本的な2つの偏光のベクトル和として表すことができます. また,偏光状態は,光強度によらず,位相差 δ と ExEy の振幅比 Ex / Ey で決まるため,光強度を1に規格化することができます.

規格化する前のジョーンズベクトル E は,

(1)式

と表されます. ここで,振幅 E0x , E0y は正の値です. 実際の測定では,波動の絶対位相は無視され位相差 δ = δy - δx だけが考慮されるので,位相差 δ を使って式を書き換えて,ExEy に共通な波動項 exp [ i ( ωt - kz ) ] と位相項 1/ exp ( i δx ) を省略すると,E は,

(2)式

と書き換えることができます. (2)式の水平成分および垂直成分はそれぞれ,(3)式の通りです.

(3)式

言い換えると,(2)式は(3)式の2つの偏光の和 E = EII + E であり,E0x = E0y ,δ = 0 を仮定すると,

(4)式

と書くことができます. これは,45° 方位の直線偏光です.

ここでは,光の絶対強度ではなく振幅比 Ex / Ey が問題なので,光強度 I を 1 として,ジョーンズベクトルを規格化します. 光強度は I = E0x2 + E0y2 と表せることから,I = E0x2 = E0y2 の場合には I = 2 E0x2 = 1 となるので,(4)式の両辺を√2 E0x で割って,

(5)式

が得られます. これは,規格化ジョーンズベクトルで表した 45° 方位の直線偏光です.

(3)式の水平および垂直方向の直線偏光を表すジョーンズベクトルに対して同様の規格化を行うと,

(6)式

が得られます.

さらに,右回り円偏光を表すジョーンズベクトルは,(2)式に δ = π/ 2 を代入し,オイラーの公式 [注3] から求めることができます. 左回り円偏光を表すジョーンズベクトルも同様に,(2)式に δ = -π/ 2 を代入することで求まります. 右回り円偏光,左回り円偏光は,それぞれ,

(7)式

と表されます.

【注3】 「オイラーの公式」については,徒然「光」基礎講座|誘電関数って何だ?| 2.2 波動を式で表現するをご参照ください.

2.2 基本的な偏光状態のジョーンズベクトル

図4に,基本的な偏光状態とそのジョーンズベクトルをまとめます.

図4 基本的な偏光状態のジョーンズベクトル表示
図4 基本的な偏光状態のジョーンズベクトル表示
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