膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

光学異方性媒質中の光の伝搬: 光線と異常光線 2

光学異方性媒質中の光の伝搬は

8. 光線と異常光線 2

第7回に続き,光線速度面(ray surface)を用いた作図により,異方性媒質中の常光線/異常光線の屈折方向を求めていきます.

8.1 入射条件 2(光学軸:界面に平行,光入射:垂直)

前節図17とは異なる入射条件についても考察しましょう. 図20のように光学軸が入射面内にあり界面と平行な場合,常光線と異常光線の波面は界面に平行で,入射された光は屈折せずに直進するが,常光線と異常光線の光線速度面の違い,すなわち媒質内における両者の位相速度の違いから位相差が生じます.

図20 常光線/異常光線の進み方(4)
図20 常光線/異常光線の進み方(4)

液晶ディスプレイの光学補償に用いられる位相差フィルムは,この異常光線の位相遅延(Retardation)を利用した製品です. 厚さ d の位相差フィルムを1回透過すると,R = Δnd = ( ne - no ) d の位相差が得られます.
また,図20の常光線と異常光線の屈折率差を利用した実用的な偏光素子がプリズム型偏光子です. ここでは,その代表例として, 図21にグランテーラープリズム (Glan-Taylor prism) を示しておきます.

図21 グランテーラープリズム
図21 グランテーラープリズム

グランテーラープリズムは,方解石の三角プリズムを2つ組み合わせた構造をしています. 1軸性結晶である方解石(Calcite, CaCO3)の常光線と異常光線の屈折率差を利用して,y 軸方向の偏光を全反射させ,x 軸方向の偏光だけを通すように設計されており,消光比(extinction ratio)| Etx |2 / | Ety |2 は 105 以上の値が得られます. また,2つのプリズムがエアギャップで向かい合っているため,適用波長範囲が広く,損傷しきい値が高いという特長があります.

8.2 入射条件 3(光学軸:斜め,光入射:垂直)

図22(a)のように光学軸が入射面内にあり,界面法線から角度 θ を成している場合を考えましょう.

図22 常光線/異常光線の進み方(5)
図22 常光線/異常光線の進み方(5)

常光線の進み方は,図19,図20,図22(a)を比較すれば分かるように,異方性媒質の光学軸の方向に因らず一定です. 一方,異常光線の進み方は図19とは異なりますが,作図の仕方は同じです.

まず,ホイヘンスの原理を示した図22(b)から,異常光波面は界面に平行,波面法線ベクトル ae は界面に垂直になることが分かります. 異常光線は,界面と平行な異常光波面と異常光線速度面の接点を光源から見通す方向に進むので,図22(c)に示すように光学軸方向に屈折します. このときの異常光線の屈折角を φ とすると,φ は,θ,neno の関数として次式で与えられます [2] .

(25)式

[3] 山口留美子: 日本液晶学会サマースクール2003予稿集, 日本液晶学会 (2003) 19-32.

このように,異方性媒質では,異常光波面の進む方向(位相速度方向)とエネルギーの進む方向(光線速度方向,または単に光線方向)は一般的に一致しません. 代表的な1軸性結晶である方解石を通してものを見ると,図23のように像が2重に見えるのは,このためです.

図23 方解石の複屈折
図23 方解石(Calcite, CaCO3)の複屈折
テクノシナジーの膜厚測定システム
膜厚測定 製品ラインナップ
膜厚測定 製品ラインナップ
Product
膜厚測定 アプリケーション
膜厚測定 アプリケーション
Application
膜厚測定 分析サービス
膜厚測定 分析サービス
Service
ページの先頭へ