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光学異方性媒質中の光の伝搬: 偏光の表し方

光学異方性媒質中の光の伝搬

1. 偏光の表し方

まずは,光学異方性媒質の解析に不可欠な偏光について復習しておきましょう.

1.1 直線偏光,円偏光,楕円偏光

図1に電磁波の概念図を示します. 光は,互いに直交する電場 E と磁場 B が振動しながら E × B 方向(EB の外積方向, E 方向から B 方向にネジを回したときに,ネジが進む方向)に伝搬する横波です. 電場 E は波数ベクトル k と電場 E が張る平面内で振動しながら進みます. この電場振動面を光の振動面,すなわち偏光面と定義します.

図1 電磁波の伝搬と偏光面
図1 電磁波の伝搬と偏光面

偏光(polarization)とは,光の電場振動面が空間的に偏った状態です. 任意の偏光は,2つの基本的な偏光 ExEy のベクトル和で表せます. 偏光状態を決めるパラメーターは,2つの偏光 ExEy の位相差 δ = δy - δxExEy の振幅の比 Ex / Ey です. 位相差δは,波動 ExEy の初期位相をそれぞれ δx ,δy として,δx を基準に δy の進み方/遅れ方を表したもので δ = δy - δx と定義されます. 図2は,位相差 δ = δy - δx を変化させた場合の偏光状態変化を示しています.

図2 位相差と偏光状態
図2 位相差と偏光状態

2つの偏光 Ex , Ey が同じ位相 δ = δy - δx = 0° ,同じ振幅 Ex = Ey の場合,合成される偏光は図2(a)のように xy 平面上45° 方位の直線偏光になります. Ey が進むか,Ex が遅れるかして,位相差 δ = 90° ( = π/2 = λ/4 ) が生じた場合の合成波は,図2(b)のように,合成電場ベクトルが時間と共に円周上を右回転する右回り円偏光になり,位相差が δ = -90° ( = -π/2 = -λ/4 ) の場合には,左回り円偏光になります [注1]. 一般的には,偏光 ExEy が任意の振幅と位相をとるため,例えば図2(c)のように,合成される偏光は楕円偏光になります.

【注1】 δ = 90° で右回り円偏光,δ = -90° で左回り円偏光になるのは,波動の位相を (ωt - kx + δ) と定義した場合で,これは検知器側から偏光を観測することに対応します. 一方,波動の位相を (kx - ωt + δ) と定義した場合には,偏光を光源側から観測することになり,円偏光の回る方向が逆になります. 詳しくは,徒然「光」基礎講座|誘電関数って何だ?| 2. 光の足し合わせを視覚的に理解するをご参照ください.

1.2 位相差 δ変化に伴う偏光状態変化

位相差 δ = δy - δx を 0 から 2π まで変化させたときの偏光状態変化を,図3に示します.

図3 位相差の増加に伴う偏光状態変化
図3 位相差の増加に伴う偏光状態変化( Ex = Ey の場合)

図では,振幅強度を Ex = Ey としてプロットしてあり,位相差 δの増加を時計回りに描いています.

位相差 δ = δy - δx = 0°(45° 方位の直線偏光)から位相差を増加させていくと,位相差 δ = 90°(δ = π /2):右回り円偏光 →  δ = 180°(δ = π ): -45° 方位の直線偏光 → δ = 270°(δ = 3π /2):左回り円偏光の順で連続的に変化して, δ = 360°(δ = 2π )で元の 45° 方位の直線偏光に戻ります.

ExEy の振幅比 Ex / Ey が変わった場合には,図3に示した偏光状態の縦横比が変わります.

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