膜厚測定,分光測定,分光エリプソメトリー,スペクトル解析のテクノ・シナジー

光学用語解説:【は行】

光学用語解説

【は行】

薄膜干渉 thin film interference

波長程度に薄い膜(薄膜)に光が入射すると,膜表面からの反射光と膜内を往復してくる膜裏面からの反射光の重ね合わせによって干渉が生じます. 例えば,シャボン玉の色は,この薄膜干渉によって作り出されています.
→ 徒然「光」基礎講座|膜厚測定・干渉分光法とは

図は,厚さ d の透明な自己保持膜 ( n = n f , k = 0 ) に, 入射角 θi で光が照射された場合の光の伝搬をモデル化したものです. (a) は入射直後の光の進行状態, (b) は (a) で発生した屈折光が膜内を往復した後の光の進行状態を示しています. なお,説明図を簡略化するため, 薄膜内を複数回往復する高次の干渉光は省いて描いてあります.

薄膜中の光の伝搬と干渉
薄膜中の光の伝搬と干渉

左上空の空気中から入射された平面波は, 界面 I (空気-膜界面) で一部反射し, 反射角 θr 方向に進みます. 一方, 反射しなかった残りの平面波は, 界面 I で屈折して膜媒質中を屈折角 θt 方向に進行します(スネルの法則). (b) に示すように, 膜の裏面に到達し界面 II (膜-空気界面) で反射した平面波は, 膜を往復して再び界面 I を透過し, 表面反射光と重ね合わされた状態で空気中を右上方へと伝搬していきます. 膜の往復分余分に進んできた裏面反射光と表面反射光との光路差を δ とすると,

位相膜厚

と求められます. 膜を片道1回分の光路差を位相膜厚 β といいます.

実際に私たちが観測する反射光 / 透過光は,薄膜内で多重反射,多重干渉をした全ての反射光 / 透過光です. 薄膜内での多重反射,多重干渉を含めたトータルの反射光の強度,透過光の強度は,振幅透過係数 / 振幅反射係数(フレネルの式)および位相膜厚 β を使って計算することができます.

自己保持膜における多重干渉
自己保持膜における多重干渉
薄膜干渉の例:シャボン玉
薄膜干渉の例:シャボン玉

→ 執筆書籍紹介|『ビジュアル解説 光学入門』

波動光学 wave optics

光を光線ではなく波(電磁波)として扱う光学の分野.幾何光学では取り扱えない光の干渉,回折,偏光などを取り扱うことができます.

バビネの原理 Babinet's Principle

開口部と遮蔽部が反転した互いに相補的なスクリーンで生じる回折像は等しいという原理で,1837年,バビネによって示されました.

ネガ型2次元回折格子(方形開口)のとポジ型2次元回折格子(方形ドット)の回折像を比べてみました. 2次元回折格子は,ネガ型,ポジ型のいずれも4パターン/mmで,互いに方形開口と方形ドットが反転したパターンになっています.

ネガ型2次元回折格子(方形開口)
ネガ型2次元回折格子(方形開口)
ネガ型2次元回折格子(方形開口)により生じる回折像
ネガ型2次元回折格子(方形開口)により生じる回折像
ポジ型2次元回折格子(方形ドット)
ポジ型2次元回折格子(方形ドット)
ポジ型2次元回折格子(方形ドット)により生じる回折像
ポジ型2次元回折格子(方形ドット)により生じる回折像

バビネの原理から予想される通り,回折像は同一です. 開口列の回折像に比べて,ドット列の0次光強度の方が強いのは,ドット列の開口面積が開口列の3倍だからです.

反射 reflection

光学定数の異なる二つの物質の境界面を光が通過する時,光の一部が界面を通過せずに入射側の物質に戻る現象.

鏡面反射(mirror reflection): 光が透過する媒質境界面が,光の波長に比べて十分に平坦でなめらかな場合,反射角は入射角と等しくなります. このような反射を,鏡面反射,または正反射と呼びます.

鏡面反射(正反射)の入射角と出射角は等しい
鏡面反射(正反射)の入射角と出射角は等しい

乱反射(diffused reflection): 光が透過する媒質境界面が凸凹している場合には,反射光は鏡面反射とは異なり,拡がった反射角を持つようになります. 反射角の分布は界面の凹凸の大きさや細かさに依存します. 入射角とは異なる角度にも無視できない反射光が生じる場合を乱反射と呼びます.

コピー用紙の乱反射
コピー用紙の乱反射

全反射(totalreflection): 屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入射するとき,入射角がある角度(臨界角)を越えると,境界面を透過せず,全ての光が反射する現象を全反射と呼びます.

ガラス-空気界面における全反射
ガラス-空気界面における全反射

反射の法則 law of reflection

媒質1と媒質2の境界面において,媒質1から入射された光が境界面で反射するとき,反射角 θr は入射角 θi に等しく,反射角と入射角は逆符号で,入射光と反射光と境界面法線は,同一の平面(入射面)内にあるという反射の性質をまとめて反射の法則と呼びます.

反射の法則ー
反射の法則

光ディスク(CD / DVD / Blu-ray) optical disk

デジタル情報をプラスチック円板上にドット列として記録した可搬メディア.記録に用いる光の波長,記録密度によって CD ( λ = 780nm , 700MB ), DVD ( λ = 650nm ,片面一層 4.7GB ) , Blu-ray ( λ = 405nm ,一層 25GB ) と呼ばれます. 光ディスクには,生産時に予め情報が書き込まれた読み込み専用(ROM),ユーザーによる追記が可能なライトワンス(R),複数回に渡って書き換え可能なリライタブル(RAM,RW)があり,ディスクの構造が異なります.

ダミー
光ディスクの例:(a) CDの顕微鏡画像,(b) CD-Rの顕微鏡画像
DVD-Rのランド-グルーブ周期構造を利用した回折像撮影
DVD-Rのランド-グルーブ周期構造を利用した回折像撮影

→ 執筆書籍紹介|『イラストレイテッド 光の実験』

フェルマーの原理 Fermat's principle

幾何光学における基本原理の一つ.フランスの数学者フェルマーが1661年に発見しました. 「光がある点を出て別の点に向かって進むとき,光が実際にたどる経路は最小時間で到達できる経路である」というもので,最小時間原理とも呼ばれます.

フェルマーの原理で説明した空気-水界面での屈折
フェルマーの原理で説明した空気-水界面での屈折

フェルマーの原理から出発して,到達所要時間 t が極小値を取る条件で計算するとスネルの法則を導出することができます.
→ スネルの法則

フェルマーの原理からスネルの法則を導出する
フェルマーの原理からスネルの法則を導出する

→ 執筆書籍紹介|『ビジュアル解説 光学入門』

→ 執筆書籍紹介|『イラストレイテッド 光の科学』

複屈折 birefringence

媒質の光学異方性の一つ.方向によって屈折率が異なる性質を複屈折といいます. 三次元の屈折率がいずれも互いに異なる媒質を2軸性媒質,三次元の屈折率のうち二つが等しく,残りの一つが異なる媒質を一軸性媒質と呼びます. 一軸性媒質に光を入射すると,一般に,偏光の方向が異なる二つの屈折光に分かれます. 一方が常光と呼ばれる屈折の法則に従う光,他方が異常光と呼ばれる屈折の法則に反した挙動をする光です. 方解石の結晶に光を通すと,物が2重に見えるのは方解石の複屈折性によるものです.

方解石の複屈折による2重像
方解石の複屈折による2重像

→ 徒然「光」基礎講座|光学異方性媒質中の光の伝搬

フラウンホーファー回折 Fraunhofer diffraction

光源から開口(スリット)までの距離,開口から投影スクリーンまでの距離が波長に対して相対的に無限遠と見なせる場合の回折をフラウンホーファー回折(遠方場回折)といいます. 無限遠と見なせる距離とは,光源から飛来する光が,平面波として回折源(開口)に当たり,回折源が放射する微小球面2次波が平面波になって投影スクリーンに到達する程度の距離です. 言い換えると,平面波の重ね合わせによる回折がフラウンホーファー回折です.レンズなどの光学的な分解能は,フラウンホーファー回折によって決まります.

フラウンホーファー回折
フラウンホーファー回折
方形開口および円形開口のフラウンホーファー回折像
方形開口および円形開口のフラウンホーファー回折像

→ 執筆書籍紹介|『ビジュアル解説 光学入門』

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プランクの法則 Planck's law

黒体から放射される電磁波の分光放射輝度,もしくはエネルギー密度の波長分布に関する公式. 1880年代のプロイセン(現在のドイツ)では,鉄鉱石から鉄を作る過程で,千度以上にもなる熔鉱炉の温度を測れる温度計が当時なかったため,熟達した職人が放射光の色で熔鉱炉中の鉄の温度を判断していました. これを科学的に解釈し定式化したのがマックス・プランクです.彼は,古典的な理論では説明が不可能だった体からの放射光スペクトルを,正確に説明できる「プランクの法則」を1900年に導出し,前期量子論を生み出しました.

プランクの法則 プランクの法則から求めた放射強度スペクトルとハロゲン光源の測定放射強度スペクトル
プランクの法則から求めた放射強度スペクトルとハロゲン光源の測定放射強度スペクトル

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ブリュースター角 Brewster's angle

屈折率が異なる媒質界面において, p 偏光の振幅反射係数および振幅反射係数の絶対値の二乗である反射率が 0 になる入射角をブリュースター角といいます.

空気-ガラス界面の場合のブリュースター角
空気-ガラス界面の場合のブリュースター角

ブリュースター角で入射した場合にどうして振幅反射係数が 0 になるのかは,入射した光が物質内に電気双極子を作り出し,それによる電気双極子放射同士が干渉して屈折光が形成されるようすを考えると理解することができます. 入射角がブリュースター角と等しいとき,反射光の進行方向と電気双極子の振動方向が一致します. 電気双極子の振動方向には光が放射されませんので,反射光は 0 になります.

空気-ガラス界面の場合のブリュースター角
空気-ガラス界面の場合のブリュースター角

→ 執筆書籍紹介|『ビジュアル解説 光学入門』

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フレネルの式 Fresnel equations

フレネルの式は,フランスの物理学者フレネル(Augustin Jean Fresnel)が導いた媒質界面における光の反射・屈折を記述する式です.

図は,入射光,反射光,屈折光の電場 E ベクトルと磁場 B ベクトルのようすを示しています. 図 (a) がp偏光,図 (b) が s 偏光です. 図中, (a) の磁場 B と (b) の電場 E は,紙面奥から手前に向かっています.

媒質界面における電場および磁場の境界条件
媒質界面における電場および磁場の境界条件

図の p 偏光, s 偏光それぞれについて,入射媒質中の入射光と反射光の電場水平成分の和は透過光の電場水平成分に等しく,入射媒質中の入射光と反射光の磁場水平成分の和は透過光の磁場水平成分に等しくなります. つまり,電場と磁場は媒質界面を超えてもいきなり増減することはなく連続です. 電場と磁場に関する境界条件は,次の式にまとめられます.

電場と磁場に関する境界条件式

E = cB / n が成り立つことを使って B 成分を消去し,次に Etp を消去すれば, p 偏光, s 偏光それぞれの反射振幅,透過振幅を表すフレネルの式が得られます.

フレネルの式

ここで, rp は入射 p 偏光の電場振幅 Eip に対する反射光の電場振幅 Erp の比で, p 偏光の振幅反射係数(amplitude reflection coefficient)と呼ばれます. 同様に, tp は p 偏光の振幅透過係数(amplitude transmission coefficient), r は s 偏光の振幅反射係数, t は s 偏光の振幅透過係数です.これらの式は,フレネル係数(Fresnel coefficient)とも呼ばれます.

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分解能 resolution

理想的な無収差レンズで光を集光しても,完全な 1 点にはならず,焦点付近には有限の大きさを持つエアリーパターンが形成されます. そのため,スクリーン上の 2 つの像(エアリーパターン)が,ある距離以下に近づくと, 2 つの像を分離して識別することができなくなります. 2 つの像を分離・識別できる最短距離を分解能といいます. 分解能には,レイリーの分解能,スパーローの分解能など,いくつかの定義が存在します.

エアリーパターンと分解能
エアリーパターンと分解能

→ 執筆書籍紹介|『ビジュアル解説 光学入門』

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分極 polarization

誘電体に外部から電場をかけると,物質内に電荷の偏りが生じ,電気双極子が形成される現象.誘電分極ともいいます. 原子核に対する電子の変位によって生じる分極を電子分極, NaCl のようなイオン状態の原子が変位して生じる分極をイオン分極(原子分極),水のように極性を持った粒子の方向変化により生じる分極を配向分極と呼びます.

応答する角周波数が低い順に配向分極,イオン分極,電子分極
応答する角周波数が低い順に配向分極,イオン分極,電子分極

分光エリプソメーター spectroscopic ellisometer

偏光解析パラメーター ( 振幅比角 Ψ と位相差 Δ ) の測定装置をエリプソメーター(ellipsometer)と呼びます. エリプソメーターは, その測定機構上, 大きく消光法 ( null ellipsometry ) と測光法 ( photometric ellipsometry ) に分けられます. 消光法は, 直交ニコル ( crossed Nicols ) の偏光子配置で, 検光子の透過光量が 0 になる消光状態を利用し, プローブ光の偏光状態を測定します. 具体的には, 偏光子 1/4 波長板を用いて試料からの反射光が直線偏光になる入射楕円偏光を作り, 検光子通過後の光が消光するように検光子を回転させて, Ψ , Δ の測定を行います. 消光法は, 測定分解能が高い反面, 操作が煩雑で, 測定に長い時間を要するという欠点があります. また, 測定に 1/4 波長板を用いるため, 基本的に分光エリプソメトリーには向きません.
一方, 光学系を消光状態にせず, 検光子通過後の光強度をそのまま測定する方法を, 消光法に対して測光法と呼びます. 測光法には, 偏光素子を機械的に回転させる回転検光子型 ( rotating analyzer ) および回転補償子型 ( rotating compensator ), 光弾性変調器を用いた位相変調型 ( phase modulation ) などがあります. 現在, 市販されている分光エリプソメーターのほとんどが, 測光法を採用しています.
分光エリプソメーターでは, Xe ランプなどの白色光源と分光器を用いてスペクトル測定を行います. 最近, 検出器にフォトダイオードアレイ ( PDA: photodiode array ) を用いて分光測定の高速化を図った装置がポピュラーになってきました. 図に PDA を検出器に用いた代表的な測光法分光エリプソメーターである回転検光子法の基本構成を示します.

回転検光子法分光エリプソメーターの基本構成
回転検光子法分光エリプソメーターの基本構成

分光エリプソメトリー spectroscopic ellisometry

分光エリプソメトリーは,単一波長のエリプソメトリーを分光測定に発展させた測定解析手法です. エリプソメトリーは,一つの光を p 偏光と s 偏光の二つの波動成分に分割した干渉法で,同一光路が保証された p 偏光の波動方程式と s 偏光の波動方程式との相対的な関係である p 偏光と s 偏光の振幅比角 Ψ と位相差 Δ を測定します. そのため,別々の光路を通過した光を合成する通常の干渉分光法と比べて精度,感度ともに優れています. エリプソメトリーから発展した分光エリプソメトリーは,さらに,スペクトルが持つ豊富な情報量を活かした薄膜の光物性評価が可能で,非接触,高精度,測定が簡便などの利点から,精密な薄膜評価を必要とする様々な分野で広く利用されています.
→ 徒然「光」基礎講座|分光エリプソメトリーとは

分光エリプソメトリー:解析の流れ
分光エリプソメトリー:解析の流れ

平行ニコル parallel Nicols

二つの偏光子の透過軸を平行に配置した状態.パラレルニコルともいいます.

平行ニコル
平行ニコル

偏光 polarized light

光の電場の振動方向が空間的に偏った状態の光を偏光と呼びます.光の電場が一つの平面内で振動する偏光を直線偏光,光の電場の振動が伝搬に伴って円を描く偏光を円偏光,円偏光と直線偏光の混じり合った偏光を楕円偏光といいます.円偏光や楕円偏光は,直線偏光子と位相差板の組み合わせで作り出すことができます.
→ 徒然「光」基礎講座|光学異方性媒質中の光の伝搬

(a) 直線偏光,(b) 円偏光,(c) 楕円偏光
(a) 直線偏光,(b) 円偏光,(c) 楕円偏光

p 偏光, s 偏光: 異なる媒質間の界面で光が反射されるとき,入射光,界面法線,反射光を含む面を入射面と呼び,光の電場振動が入射面に平行な偏光を p 偏光,入射面に垂直な偏光を s 偏光と定義します.

p偏光,s偏光
p 偏光, s 偏光

偏光子 polarizer

特定の電場振動面を持つ光のみを透過する光学素子を偏光子といいます. 通常は直線偏光子を意味し,入射光の偏光状態にかかわらず,出射光は必ず直線偏光になります. 実用的な偏光子には,方解石を用いたニコルプリズム,グラントムソンプリズム, 2 色性を利用した偏光フィルム,透明な板上に波長程度の間隔で金属ワイヤーが並べられたワイヤーグリッド偏光子,ブリュスター角を利用したブリュスターウインドなど,いくつかの異なる原理に基づくものがあります.

偏光子のジョーンズ行列
偏光子のジョーンズ行列

ここでは代表的なプリズム型偏光子としてグランテーラー ( Glan-Taylor ) プリズムを挙げます. グランテーラープリズムは,方解石のプリズムを 2 つ組み合わせた構造をしていて,方解石の常光線と異常光線の屈折率差を利用して,y軸方向の偏光を全反射させ,x軸方向の偏光だけを通すように設計されています. 消光比 ( extinction ratio ) が高いうえ, 2 つのプリズムの間がエアギャップになっているため損傷しきい値が高く,適用波長範囲が広いという特長があります.

偏光子の例:グラン・テーラー・プリズム
偏光子の例:グランテーラープリズム

→ 徒然「光」基礎講座|光学異方性媒質中の光の伝搬

偏光フィルム polarizing film

偏光フィルムは,最も身近な偏光子です. 偏光フィルムは,ヨウ素の針状結晶を含んだ高分子(ポリビニルアルコール)を,一方向に引き延ばして作製されています. 引き延ばされたヨウ素の針状結晶は,一方向に揃い,結晶が揃った方向の偏光を吸収して,それと直交する偏光のみが透過する偏光子になります. 透過する偏光の振動方向を透過軸と呼びます. 入射光は,偏光方向と位相がランダムな自然光ですが,図示の都合上,振動方向がランダムな矢印として表しています. 偏光子では,透過軸方向の振動成分のみが透過するため,出射偏光の強度は,入射自然光の約半分になります.

偏光フィルムによる出射直線偏光の生成
偏光フィルムによる出射直線偏光の生成

ベンタブラック vantablack

ベンタブラック (Vantablack®: vertically aligned nanotube arrays) は,最も黒い人工物質として世界記録を作ったことがある黒色コーティングです. ベンタブラックの表面には,その名の通り,カーボンナノチューブ(CNT)が垂直にギッシリと並べられています. 元々は、衛星搭載の黒体較正システムとして開発されましたが,ユニークな物理的特性と光学的特性により、広範囲なアプリケーションに使用されます.

ベンタブラック
ベンタブラック

ポアンカレ球 Poincare sphere

フランスの科学者ポアンカレが考案した偏光の状態を表示するための球体です. 偏光状態を半径が強度 I に比例する球面上の 1 点 P の座標に対応させて表示します.

ポアンカレ球では, S3 軸(位相)の符号が異なる二つの座標定義が存在します. 次に示すポラリメトリーなどで使用される一般的な座標定義では,北半球が右回り楕円偏光になります.

一般のポアンカレ球の座標定義
一般のポアンカレ球の座標定義

一方,エリプソメトリーで使用される座標定義では,北半球が左回り楕円偏光です. これは,偏光解析関数: ρ = tanΨexp(iΔ) の複素平面上の座標定義( Δ の回転方向)と合わせるように1968年のネブラスカ集会(Nebraska Convwention)で座標系を決めたためです.

エリプソメトリーにおけるポアンカレ球の座標定義
エリプソメトリーにおけるポアンカレ球の座標定義

当然のことながら,両者は対応するストークスベクトルの計算式も違ってきますので,どちらの座標系で解析しているのかを明確にしておく必要があります.

放射 radiation

電磁波を放出すること,または物質から放出された電磁波および粒子線を放射と呼びます. 輻射ともいいます.

電気双極子放射(electric dipole radiation): 回転や振動運動する電気双極子は,連続した電荷の加速度運動をしており,回転や振動と同じ周波数の電磁波を放出します. これを電気双極子放射と呼びます. 電気双極子放射の波長は,入射光の波長に等しく,双極子の温度とは独立です.

熱放射(thermal radiation): 有限の絶対温度をもつ物体から放出される電磁波を熱放射と呼びます.室温程度の物体からも,遠赤外線領域にピークを持つ熱放射が出ています.物体の温度が上がるとピーク波長は短波長にシフトし,やがて可視領域に達するようになります.理想的な熱放射をする物体を黒体とよびそのスペクトル分布は黒体の温度にのみ依存します.
→ 黒体放射
→ プランクの法則

 

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